季節のようにさざ波のように変化して

「TとA」は、「ao(アオ)」から一歩踏み出して生まれた協働ブランドです。

Tは「宝島染工」のT。
Aは「ao」のA。

天然染料、手染めを軸とする「宝島染工」の大籠千春をディレクターに迎え、「ao」の発展形として始まりました。

TとAの個性を重ね合わせ、さらには日本各地のつくり手とのつながりから生み出される服。自由な広がりのある服をお届けしたいと思います。

ディレクターの大籠千春は言います。

「aoがごはんだとしたら、TとAはおかず」。

肌触りと安心感を丁寧に紡いできた「ao」に加わる新しいメンバーとして、「TとA」は、少しエッジを効かせ、自由でコンテンポラリーなムードを乗せていきます。

私たちの服は、私とつながる服、彼方とつながる服でありたいと思います。

季節が移り変わり、目に映る色や肌で感じる気配を変えていくのと同じように、私たちの服も少しずつ変化して、その時々のあなたの気分と共にありたい、時には小さな発見や驚きで、わくわくする気持ちも生み出したい。

新作を発表するだけでなく、すでにあるかたちの色や素材を変えて少しずつコレクションを広げていきます。

一度につくる量は少しずつでも、長くつくり重ねたい。そのものの価値を等身大でご覧いただきたいから、価格も価値も摩耗しない、正直なものづくりを、緩やかにでも絶やさずに続けていくこと、つなげていくこと。それが私たちにとって大事なことです。

気分よく、風に乗って。皆さまにその気持ちを共有していただけるように。

可能性を狭めない

私たちがつくるのは、毎日に寄り添う服。暖かいときは一枚で、寒くなったら重ねていって。いつでも、どのようにでも着られる服。日々手に取りたくなる、日々手に取れる服。

長く着られる普遍的なデザインと、ものとしての強さ、そして買いやすさを持っていたい。

素材。着心地。価格。個性。環境。

今、ものを増やすということが、世の中で試されています。サスティナブルに、環境負荷のないこと。ゴミを増やさないこと。持ち過ぎないこと。私たちはものを生み出す立場として、つくるプロセスで何を選ぶのか、さまざまな可能性に対してオープンでありたいと思います。

天然染料や天然繊維だけでなく、化学染料や化学繊維にも目を向けます。自分たちがこれまでいたところだけにとどまらず、どちらの良さも見つめながら、魅力的なものづくりを続けるために進化していきたいと考えています。摩耗しない強さのある、息の長い服づくりをするために、進みながらより良い方向を選び、お客様の気持ちに届く服を目指して。

続ける、つなげる

「ao」と「宝島染工」、二つの交わり。

「ao」の母体となるのは、新潟県の糸魚川市、日本列島のちょうど真ん中を横切るフォッサマグナの一端に位置する縫製工場「美装いがらし」です。繊細なブラウス縫製を得意とし、さまざまなアパレルブランドの縫製を担い技術を高めながら、2005年以降はオリジナルブランド「ao」でガーゼ織りの良さを追求してきました。

一方の「宝島染工」は、福岡県の久留米に近い田園地帯。天然染料による手染めを軸に、自らを「中量生産」と定義して染めを請け負いながら、こちらもオリジナルの衣服をジェンダーレスに発信し、代表の大籠千春の柔軟な思考で注目を集めてきました。

遠く離れた二つの地点が結びつき、日本各地に瞬き存在する個性—織り、編み、加工、染め、印刷など—それぞれの個性と軽やかにつながり、新たに発光できる場となれたらと思います。そのつながりが網の目のように交わり、新しい作り手との出会いを招くように広がりを持ちながら、つくる人、着る人、双方に風通しのよいブランドへ成長していきたい。そう願っています。

撮影:HAL KUZUYA