TとAの文字を連想させる直線的なパターンを、デザインの随所に取り入れています。お手元に届く服の背中や脇に、スカートのフレアに……TやAのかたちが隠れています。

直線的なカッティングだけれど、有機的なシルエット、身体を緩やかに包む心地よさ。身につければドレープの美しいラインが生まれるように、ブラウジングやボタンなどで着こなしが変わるよう、小さな仕掛けを込めて自由度を持たせています。

古来日本の伝統である着物や、デザイナーが以前に見入ってしまったアイヌ装束のデザインは、平面や直線で構成されていても、身にまとえば、布の柔らかな表情が身体の線をなぞり、美しい造形となる。

身につけると印象が変わる、その変化をTとAでも表現できたら、と思います。

直線で構成するパターンは、残布を減らすメリットもあります。

布をできるだけ無駄にせずに、その分、少しでも洋服そのものに使える分量を増やす。颯爽と歩けばブラウスがふわり、もう少しだけ豊かにふくらむとか、そんな具合に。

デザインの際に意識していることの一つが、「ちょっと驚きのある喜び」。

そう思うとき、頭に浮かぶのは、バウハウスのオスカー・シュレンマーがつくったバレエのコスチューム(「トリアディックバレエ」)です。

コスチュームが直線や円、三角といった形状の組み合わせで構成されていて、ちょっとファニーな世界。

皆さんもぜひ、検索してみてください。昔のものなのにとても刺激的で面白いものが見られますよ。

談:デザイナー 菊地智揮

撮影:HAL KUZUYA

構成:森 祐子