TとAの服は、体をしめつけない、けれどボタンを留めたりリボンをしめたりして、思い思いにかたちをつくれるものが多いのです。身体と服のあいだに、空気を流すようなゆとりを、つくっています。

ゆとりや間合い。ひと息つくすきま。

日々の暮らしの中で、ふと呼吸が浅くなってしまう時もありますが、やはり肩の力を抜いて、ひと心地つく時間も大事ですね。TとAの服にもそんな安心するすき間を感じていただきたいと思います。

「TとA」の「T」たる宝島染工があるのは、福岡、筑後平野の田園地帯。宝島染工の代表を務める大籠千春が生まれ育った地でもあります。有明海まで続く平野に田畑が広がり、水路が行き交う。
ここには「風景のすきま」があるんです、と、慣れ親しんだこの地を愛する理由を話してくれました。
「何もない場所があるのが、田舎のいいところ。人が少なくて隙間が多い。風景の、きれいな隙間。誰が見るわけでもないけれど、一面に花が咲いていたりして。」

空はどこまでも広く、ぽかーんとあいている感じ。

一人ぽつんとできるところ。

ふと立ち止まって、心を開け放つことができる場所。

最初の就職も福岡で、途中、数年を除き、福岡での暮らしを離れたことがないという大籠自身、やはりあっけらかんとしておおらか。その佇まいは、宝島染工にもあり、そして生まれる服にも表れます。TとAでも、その広さが表現できたらなあ、と思います。

撮影:HAL KUZUYA

構成:森 祐子